滑石製宝塔形経筒
かっせきせいほうとうがたきょうづつ
概要
筒身、笠、相輪(そうりん)の三部材により宝塔形(ほうとうがた)の経筒(きょうづつ)を組み上げる。筒身は中央にやや膨らみをもった円筒形で、内底を厚く彫り残す。笠は平面円形で、上面を六角屋根形に作り、勾配(こうばい)に緩やかな反りをもたせている。軒の上面には真反(しんぞり)もみられる。相輪は三段の突帯で表現し、頂部に大きな宝珠、下辺に扁平な伏鉢(ふくばち)を設けた一体作りとする。出土地不詳の品であるが、白乳色の滑石を用いた経筒のほとんどは北部九州で出土している。本品の類例は、福岡県宗像郡(むなかたぐん)稲元経塚(いなもときょうづか)の仁平4年銘(1154)の宝塔形経筒があり、筒身、笠、宝珠の三部材を組み合わせる点も共通している。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.67, no.44.