牡丹之図
ぼたんのず
概要
淡墨のさわやかな筆の運びは席画であろうか。日常に絵筆をたしなまれた様子が想像され、また御趣味として手芸を好まれ、押絵の作品が由緒の寺院に伝えられている。
在位期間は六歳から二十歳の十五年間。直接政務に携わらなくとも、徳川家康の孫、現将軍家光の姪として、その存在自体が、朝廷と幕府の関係修復に関わることであり、重要な役割を果たした。
母東福門院は押絵を得意とし、明正天皇にその技術を伝えたものと思われる。本作品のほかに二点同様の作品が未表具の状態で伝わるが、一連の作品は押絵の下絵あるいは構想画とも考えられようか。
(『名筆へのいざない―深遠なる書の世界―』海の見える杜美術館2012 解説より)