柿本人麻呂像御自画賛
かきのもとひとまろぞうおんじがさん
概要
後陽成天皇は、豊臣政権の天正十四年(一五八六)から徳川政権の慶長十六年(一六一一)までの二十五年間在位。移りゆく武家勢力のはざまで、深く学問を好まれ、古今伝授を守るため石田三成軍に包囲された細川幽斎を救い出したり、慶長勅版と呼ぶ木活字本を出版させ、また侍臣に伊勢物語や源氏物語などの講義をもされている。
柿本人麻呂の五文字を絵画化して人麻呂像を描き、賛として新古今集巻第六(冬)に所収の人麻呂の歌を書き加えられた洒脱な趣は書画に堪能であられたことがうなずかれる。画像の一筆書きに見られる速筆は比類のない大字揮毫を残されている筆勢に通じるところがある。(『名筆へのいざない―深遠なる書の世界―』海の見える杜美術館2012 解説より)