紺紙金銀交書 大般若波羅蜜多経 巻第二百十三 初分難信解品
こんしきんぎんこうしょ だいはんにゃはらみったきょう まきだいにひゃくじゅうさん しょぶんなんしんげほん
概要
金銀交書の書式は、奈良時代にあったと記録はあるが、伝存する経巻は平安中期ごろからである。そして平安時代後期に、藤原清衡が中尊寺に奉納した一切経が一つの到達点を極めた。
本経巻は、いわゆるこの中尊寺経・清衡願経の一つである。表紙には金銀泥で宝相華模様をあしらい、見返しには霊鷲山下釋迦説法図が同じく金銀泥で厳かに描かれている。深い紺色から浮かび上がってくる金銀の経文からは、若くから戦いの中で明け暮れた藤原清衡の強い願いが確かに伝わってくるようである。
ところで、金銀がふんだんに使われるのは中尊寺経の特徴であるが、赤外線調査によって、当時貴重品であったためか紙には反故紙も使われていたことが判明している。(『名筆へのいざない―深遠なる書の世界―』海の見える杜美術館2012 解説より)