源氏物語図扇面(空蝉)
げんじものがたりずせんめんうつせみ
概要
平安時代の女流作家、紫式部(むらさきしきぶ)による長編小説「源氏物語(げんじものがたり)」のさまざまな場面を描いた作品です。
源氏物語を題材にした絵のいちばん古い例は、国宝にも指定されている有名な「源氏物語絵巻」です。
平安時代に描かれた絵巻ですから、物語が生まれてまもなく、絵画化されたことがわかります。その後、源氏物語は、江戸時代にいたるまで、屏風(びょうぶ)や扇面(せんめん)にも繰り返し描かれ、工芸品の意匠としても大変愛好されました。
この作品は、扇に描かれたもので室町時代の作です。よくみると紙に折れ跡があるので、実際に扇子(せんす)に仕立てられていたものかもしれません。
画面は金雲で縁取られ、それぞれの場面を上から覗(のぞ)き込むような感覚を覚えます。これが、物語世界に入っていくような臨場感をもたらしているといえるでしょう。
たとえば、「空蝉(うつせみ)」の場面を描いた絵。空蝉への思いをつのらせた源氏が、邸(やしき)に忍び込んでその姿を垣間見るシーンです。軒端荻(のきばのおぎ)と碁(ご)を打ち合う空蝉の姿が描かれているので、当時の人々は、これをみれば、空蝉の段であることがわかりました。