苅田蒔絵小鼓
かりたまきえこつづみ
概要
慶長十六年(一六一一)三月二十八日、家康は二条城で豊臣秀頼との対面し、その後直ちに、答礼として九男義直(十一歳・尾張家初代藩主)と十男頼宣(九歳・紀州家初代藩主)を名代に任じ、秀頼の居城大坂城に赴かせた。秀頼はこの幼い使者をねぎらい、鼓を好んだ義直には鼓を、笛を好んだ頼宣には笛を、それぞれに贈った。この苅田蒔絵小鼓こそ、そのとき秀頼から義直に贈られた小鼓である。黒漆塗のに、苅田文様すなわち稲の切株が蒔絵であらわされている。切株や大根、蕪は「根を張る」ことから「音を張る」に音が通じ、楽器の文様として好まれた。胴裏には「金春(花押)」、他の一方に「秦就氏(花押)」と朱書されている。江戸時代初期の製作と思われる扇散蒔絵の内箱に納められている。
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