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冷泉家歌書類

れいぜいけかしょるい

概要

冷泉家歌書類

れいぜいけかしょるい

その他 / 鎌倉 / 近畿

鎌倉

38巻、147冊、52帖、11幅

重文指定年月日:20030529
国宝指定年月日:
登録年月日:

公益財団法人冷泉家時雨亭文庫

国宝・重要文化財(美術品)

 冷泉家に襲蔵する典籍のうち、中世を中心にした歌書類である。
 歌書類は、大きく和歌と注釈書類の歌学書に分けられる。和歌は私撰集、詠草類、歌合、定数和歌、連歌などがあり、他に古筆切や目録もある。歌学書には、藤原俊成・定家・為家の歌論書のほか、新発見の『口傳和謌釋抄【くでんわかしゃくしょう】』などが含まれている。
 時代別には、平安時代一点、鎌倉時代四一点、南北朝時代二二点、室町時代一七三点、安土桃山時代八点、江戸時代三点の総数二四八点からなる。
 和歌では、私撰集に『新葉和歌集』『現存和歌六帖』『遺塵和歌集』などがある。特に『遺塵和歌集』は、高階宗成が正安二年(一三〇〇)に高階一族の歌集を編纂したもので、冷泉家本は成立時とほぼ同時代の写本である。
 詠草類に冷泉為広・為和等の歴代当主の詠草と草稿類が多数ある。御会史料には、重文『元徳二年七夕御会和歌懐紙』に続く『貞治六年二月廿一日和歌御会』(右大臣藤原実俊以下、二条為遠、藤原為敦まで一〇紙を綴じる)があり、大永七年(一五二七)まで七点が原装のままに伝存する。
 歌合では、建暦三年(一二一三)七月十三日『内裏歌合』がほぼ同時代といえる写本である。定数和歌では、承空本の一連になる『宝治百首』がある。特に『後鳥羽院百首』は桜、石畳、菊花などの文様を具引きにした料紙に書写した升形本で、鎌倉時代中期書写と思われる。『源中納言家懐舊百首』は源国信が堀河院を追慕した百首歌で、平安時代後期の書写になり、定家様書風で旧表紙に外題を直書きする。『七社法楽』は、藤原為家が祖父俊成の『五社百首』に倣って、伊勢、賀茂、春日、日吉、住吉、石清水、北野の七社に奉納した百題百首を歌題ごとにまとめたもので、弘長元年(一二六一)の自筆本である。
 連歌には、猪苗代兼載と牡丹花肖柏の『百韻連歌』や宗祇『老のすさみ』等の室町時代写本が二一冊伝存する。
 そのほかに、俊成、西行、定家の筆と称される古筆切や定家詠草も掛幅として伝来する。
 目録類では、南北朝時代の「私所持和哥草子目六」と室町時代と安土桃山時代の冷泉家蔵書目録が伝存しているのも貴重である。
 歌学書では『口傳和謌釋抄』が注目される。本書は歌題を挙げて、用例を解説したもので、今まで知られていなかった鎌倉時代前期ころの写本である。体裁は、升形本で綴葉装一〇六丁からなり、前遊紙に西行の歌、巻末に慈円の歌を追記し、表紙には「傳領實盛」と墨書する。
 歌論書としては、歴代の当主による書写本が少なくない。藤原定家が初心者向けに著した『詠歌大概【えいがのたいがい】』は、延慶二年(一三〇九)の二条為藤書写になる仮名本がある。また、藤原為家が歌の心得を具体的に八か条にして説明した『詠歌一躰』は、孫の為秀が自筆本から書写した写本である。
 注目される注釈に万葉集に関する一群がある。『万葉集抄』は平安時代中期の歌人藤原範永を撰者に仮託した注釈書で、資経本私家集の書写者で知られる藤原資経が永仁六年(一二九八)に写したものである。『万時』は「万葉集時代考」とも呼ばれ、藤原俊成が九条良経の問いに答えたもので、良経の子息基家の書写とされる。本格的な万葉集注釈と評価される仙覚の『萬葉集注釋』巻第一と第三は、鎌倉時代後期の定為書写になるもので、いずれも最古写本として貴重である。
 このように、冷泉家歌書類は和歌史研究の中核になる資料として、きわめて価値が高く、一括してその保存を図ることとなった。

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キーワード

冷泉 / 定家 / 和歌 / 書写

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