かつしかほくさい
日本
天保元−天保3年(1830-32)頃
木版多色刷
24.2×36.2cm
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江尻は、現在の静岡県清水市。上空に舞い上がる懐紙や笠。傾いた木から舞い散る木の葉。笠を抑え、身を屈める旅人たち。画中に流れる強い風をこれほどまで巧みに描いた画家がかつていたであろうか。それら風に翻弄される事物とは対照的に悠然とそびえる富士が、確かな存在感をもって描かれている。北斎は強い風の表現を、このシリーズ以外でもいくつか試みている。この版には改印、版元印はないが、画面右下の草むらの丸い色板の余白は、本来、改印(極)を入れる箇所として確保されていたところ。