菊花唐草螺鈿経箱
きっかからくさらでんきょうばこ
概要
長方形印籠蓋造で蓋の縁を大きく削面にとった箱である。総体黒漆塗りとし、身・蓋の外面に菊唐草文、牡丹唐草文を細かい螺鈿であらわしている。
このような整然とした意匠と細密な技術とによって作られた螺鈿器は、朝鮮の螺鈿の技術が最も発達した高麗に作られたものである。その時期は大蔵経箱の官房「鈿函造成都監」が成立したころ、すなわち元宋十三年(一二七二)の前後と思われる。当経箱の遺品は世界的に少なく、わが国では他に四例を数えるにすぎなく、中でも保存状態がよい。