簸河上
ひのかわかみ
概要
簸河上は,後(ご)嵯峨院(さがいん)歌壇(かだん)の中心的な人物であった真(しん)観(かん)(葉室(はむろ)光俊(みつとし))が,鎌倉幕府6代将軍宗(むね)尊(たか)親王の和歌指南書として作成した歌論書である。内容は,和歌の起源を『古事記』の素戔嗚尊(すさのおのみこと)の「八雲(やくも)立(た)つ」の歌から説き起し,藤原(ふじわらの)公(きん)任(とう)の歌論書『新撰(しんせん)髄脳(ずいのう)』などを引きながら展開している。書名は,出雲神話にある簸河の川上で素戔嗚尊が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治した伝説に由来する。
本書は,奥書からみて,文応元年(1260)の成立からあまり下らない鎌倉時代後期の書写になる最古写本である。