千手観音坐像香合仏
センジュカンノンザゾウコウゴウブツ
概要
香合形の身の内側に千手観音坐像を、蓋の内側に功徳天像・婆薮仙像および乗雲の火舎、飛行する横笛、笙をそれぞれ高浮彫であらわす。主要な図柄は、現図胎蔵曼荼羅の虚空蔵院の中の千手観音とその眷属の図様にもとづいている。 身・蓋とも白檀の1材製で、千手観音像の脇手に至るまで共木から彫出され、彩色や截金をほどこさない素地の仕上げである。閉じ籠められた白檀の芳香が、蓋を開けて仏を拝むとともに漂い出るという絶妙の効果が期待されたのだろう。古文献の1つに、「御手箱仏」とあるが、このような香合仏を指すことばと考えられる。手足のよく伸びた千手観音像の姿が鎌倉時代初めの作であることを示唆している。