梅に鴛鴦図
うめにおしどりず
概要
鶴洲(1744-1803)は美濃出身の黄檗僧で、鶴亭の高弟です。鶴亭の別号や印章を継承しており、その技倆は鶴亭の弟子随一といえます。幼くして鶴亭の絵に感銘を受けた鶴洲は京坂で鶴亭に師事すると、帰郷後は鶴仙(1755-1826)、鶴翁(1764-1847)、鶴山(1769-1855)など、美濃を中心に弟子を育成し、鶴亭風を広めました。
水くぐりする梅樹と鴛鴦、椿を描き、吉祥性に富む本作品では、鋭い梅の枝振り、鮮やかな色彩など、鶴亭の画風をよく継承しています。とりわけ、鴛鴦は精緻な毛描きや趾の胡粉盛り上げなど、鶴亭をも凌駕する描き込みであり、鶴洲の優れた技量を示しています。画面右中ほどには「壬寅春日 鶴洲農寫意」の落款と「善」「農」(白文聯印)の印章、左下には「筆端造化」(朱文楕円印)の遊印を捺し、天明2年春、鶴洲38歳の作と判明します。鶴洲の作品は20件ほどを確認していますが、本作品の優れた完成度から、彼の代表作といえるでしょう。
【長崎ゆかりの近世絵画】